吉本興業を辞めるということは、お笑い芸人にとって大きな決断です。特に関西で活動する芸人にとって、吉本興業は夢を叶える場所であり、生活の基盤となる存在でもあります。
しかし、時にその大きな組織の中で、自分の居場所を見失うこともあるのです。大阪の劇場では孤立し、標準語での漫才は「スカしている」と批判され、自分たちの芸風が理解されない苦しみを味わっていました。
吉本興業での10年以上の経験を持つヤーレンズは、最終的に大きな決断を下します。
本記事では、彼らが吉本興業を去り、ケイダッシュに移籍するまでの経緯と、その背景にある思いを詳しく解説していきます。
ヤーレンズが吉本興業を辞めた理由は？
お笑いコンビ・ヤーレンズが2023年に吉本興業を退社し、ケイダッシュに移籍したことは、芸能界で大きな話題となりました。吉本興業は日本最大の芸能事務所であり、特に関西圏での影響力は絶大です。そんな大手事務所を辞めた背景には、複数の理由が存在していました。
大阪の劇場カースト制度に馴染めず
吉本興業の劇場文化には、長年培われてきた独特の階級制度が存在します。この制度は、芸歴や実績、周囲からの評価などによって形成されており、新人芸人は下積み時代を経て徐々に上位へと這い上がっていく仕組みとなっています。
ヤーレンズは2014年のコンビ結成以来、この制度の中で苦戦を強いられてきました。特に、劇場での評価が低く、出番も限られていたと言われています。
劇場でのステータスは、以下のような要素で決まると言われています：
- 芸歴の長さ
- 先輩芸人からの評価
- 観客動員数
- テレビ出演の実績
- 劇場関係者との関係性
このような複雑な人間関係と評価システムの中で、ヤーレンズは自分たちの居場所を見出すことができなかったと考えられます。
周囲から孤立していた
ヤーレンズのメンバーである出井隼之介さんと楢原真樹さんは、度々インタビューで当時の状況について言及しています。出井さんは「劇場で大いに嫌われまして」と率直に語り、楢原さんも「友だちゼロ」という衝撃的な発言をしています。
このような孤立状態に陥った理由として、以下のような要因が考えられます：
- 標準語を使用する独特の芸風
- 他の芸人との交流の少なさ
- 関西の芸人文化への馴染みにくさ
- 芸風の方向性の違い
標準語漫才が受け入れられず
関西の芸人社会において、標準語で漫才を行うスタイルは特異な存在でした。ヤーレンズの洗練された雰囲気と標準語での漫才は、「スカしている」という評価を受けることが多かったと言われています。
関西の漫才には以下のような特徴があります：
- 関西弁を基調とした会話
- テンポの速い掛け合い
- 庶民的な親しみやすさ
- ボケとツッコミの明確な役割分担
これに対し、ヤーレンズの漫才スタイルは：
- 標準語での会話
- 知的で洗練された雰囲気
- シュールな世界観
- 独特な間の取り方
このような芸風の違いが、関西の芸人社会での居心地の悪さにつながったと考えられます。彼らは自分たちの芸風を守りながら活動の場を広げるため、東京への活動拠点の移動を決意したと推測されます。
ヤーレンズが移籍先にケイダッシュを選んだ理由
ヤーレンズが吉本興業からケイダッシュへの移籍を決めた背景には、複数の要因が重なっています。彼らにとってケイダッシュは、芸人としての理想を実現できる環境だと考えられたのです。
トム・ブラウンの紹介
ヤーレンズのケイダッシュ移籍には、同じ事務所に所属するトム・ブラウンの存在が大きな役割を果たしています。
トム・ブラウンの布川さんは、以前からヤーレンズと交流があり、彼らの才能を高く評価していました。
布川さんは、ヤーレンズが吉本興業での活動に行き詰まりを感じていることを知り、芸人の個性を尊重する文化について伝えたと言われています。
この紹介がきっかけとなり、最終的な移籍を決断することになりました。
芸風を尊重する社風に共感
ケイダッシュの特徴として、所属芸人の個性や芸風を大切にする社風があります。
この事務所では、芸人それぞれの持ち味を活かしたマネジメントを行っており、画一的なスタイルを押し付けることはありません。ヤーレンズにとって、自分たちの標準語漫才というスタイルを理解し、支持してくれる環境は魅力的でした。
また、ケイダッシュには芸人同士が切磋琢磨できる環境が整っています。バナナマンやサンドウィッチマンなど、個性的な芸風で成功を収めている先輩芸人の存在も、ヤーレンズの決断を後押ししたと考えられます。
東京での活動に最適
ケイダッシュは東京を拠点とする芸能事務所として、テレビ番組や舞台、イベントなど、多様な活動機会を提供しています。
東京での活動を望んでいたヤーレンズにとって、ケイダッシュの持つネットワークや実績は、理想的な環境でした。
・テレビ局との強いパイプ
・若手芸人の育成実績
・バラエティ番組への出演機会の多さ
・舞台やイベントの企画力
また、ケイダッシュは比較的新しい事務所ながら、着実に実績を重ねており、成長途上の事務所という点も、新たなチャレンジを求めるヤーレンズの志向と合致していました。
ヤーレンズの上京を決意したきっかけ
お笑いゾンビへの恐れ
お笑い芸人のヤーレンズが上京を決意した大きな理由の一つに、「お笑いゾンビ」への強い危機感がありました。「お笑いゾンビ」とは、芸能界で仕事が減少しながらも活動を続ける芸人を指す言葉です。
出井隼之介さんは、複数のインタビューで「30代後半になってから新しいことを始めるのは難しい」と語っています。また、楢原真樹さんも「このまま大阪に残っていては、自分たちの理想とする芸人像に近づけない」という思いを持っていたと報告されています。
2人は以下のような具体的な懸念を抱えていました：
- 大阪の芸人市場の限界
- 年齢を重ねるごとに新しい挑戦が難しくなる現実
- 自分たちの芸風を活かせる場所の不足
このような状況を打開するため、2人は「今行動しなければ後悔する」という強い決意のもと、上京を選択したと考えられます。
年齢的な焦り
ヤーレンズの2人は、芸歴10年以上のベテラン芸人でありながら、年齢に対する強い危機感を抱えていました。
出井さんは当時32歳、楢原さんは31歳で、芸人としてのキャリアの転換点を迎えていました。
- 新人としては扱われない年齢
- 実力が問われる時期
- キャリアの方向性を決める重要な分岐点
特に注目すべき点として、お笑い界では30代前半が一つの節目とされています。
2人は「今なら変われる」という思いと「このままでは後悔する」という焦りの両方を抱えながら、上京という大きな決断を下したと報告されています。
